ジェネリック医薬品の供給不足が医療機関に及ぼす影響
2023/08/01
ジェネリック医薬品は2020年以降供給不足が進んでいるのが現状です。ジェネリック医薬品が供給不足となることで、医療機関にはどのような影響があるのでしょうか。ここでは、ジェネリック医薬品の供給と医療との関連性についてくわしく解説していきます。
目次
ジェネリック医薬品についておさらいしよう
まずは、ジェネリック医薬品がどういう医薬品であり、医療機関ではどのような位置づけに置かれているのか、ジェネリック医薬品の概要と特徴についてをご紹介します。ジェネリック医薬品について知っているという方ももう一度確認しておきましょう。
ジェネリック医薬品の有効成分は新薬とほぼ同じ
ジェネリック医薬品は、新薬と同じ有効成分を配合したお薬ですので、効果は新薬とほぼ同じといえます。新薬との違いは添加物です。ただし、添加物には薬理作用はなく、安全性についても厚生労働省で承認をされているので、安全に使える薬といえます。日本におけるジェネリック医薬品の数量シェアの割合は71%です。アメリカ、ドイツ、イギリスなどの先進国ではジェネリック医薬品の数量シェアの割合は80~90%となっており、日本は先進国のなかではまだまだジェネリック医薬品が普及していないのが現状です。
ジェネリック医薬品が安い理由は開発費用の節約にある
ジェネリック医薬品といえば、ほかの薬よりも安価で購入できるという点が特徴です。なぜ、他の薬よりもジェネリック医薬品が安く購入できるのかというと、開発費用が安いからです。通常新薬の開発には9~17年の月日がかかり、費用はおよそ数百億円以上かかると考えられています。一方で、ジェネリック医薬品はもともと世に出ている薬をベースに開発を進めるため、開発年月早く3~4年程度となり、開発費用も数億円程度と新薬よりもはるかに短い年月と安い費用で開発ができます。これによって、ジェネリック医薬品は安い価格で患者さんへの提供ができるのです。
ジェネリック医薬品がなぜ供給不足となっているのか
ジェネリック医薬品がどのような医薬品であるのかについてご理解いただけたところでここからは、なぜジェネリック医薬品が供給不足となってしまっているのか、その理由を解説します。
きっかけはジェネリック医薬品メーカーの不祥事事件
ジェネリック医薬品の供給不足のきっかけをもたらしたのは2020年の12月、福井県のとあるジェネリック医薬品メーカーの不祥事でした。爪水虫の治療薬に睡眠剤の成分が含まれており、使用をした患者さんの健康被害が報告されました。これをきっかけに都道府県が調査をしたところ、このメーカーだけでなく医薬品大手メーカーを含むさまざまなメーカーで不正や違反が発覚し、販売が差し止めとなりました。そうなるとこれらの会社のジェネリック医薬品を使っていた医療機関や患者さんは、他の会社のジェネリック医薬品を探さなければならなくなりました。このため、他社もジェネリック医薬品の製造に追われ、結果として供給不足に陥ることとなりました。
【金土日】医薬品の供給不足問題について – 2022年12月 – 健康情報テレホンサービス | 兵庫県保険医協会
昨今の社会情勢もジェネリック医薬品の供給不足を助長
メーカーの不祥事事件とともにジェネリック医薬品の供給不足を助長させたのが昨今の社会情勢です。特に新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、新型コロナウイルス感染症の治療に扱う薬の製造にピッチを上げなければならずジェネリック医薬品の製造ができなかった、物資が届かずジェネリック医薬品の製造や販売ができないという事態が発生しました。また、ロシアとウクライナの戦争によって原材料価格が高騰したり、為替が変動したりといったことも、ジェネリック医薬品の供給不足を助長させたものといえるのです。
ジェネリック医薬品業界の現状と課題 及び流通・薬価制度に関する提案
ジェネリック医薬品は全国でどのくらい不足している?
気になるのがジェネリック医薬品が現在全国的に見てどのくらい不足しているのかです。2022年12月5日に日本製薬団体連合会(日薬連)が発表したデータによると、2022年8月末時点で4234品目(全体の28%)が供給不足になっていることがわかりました。2021年からは8%の上昇が報告されており、現在ジェネリック医薬品の供給不足が深刻になっています。
医薬品3割で供給不足、4200品目に 日薬連調査
医療用医薬品の供給不足に関する対応について
ジェネリック医薬品の供給不足における医療機関への影響は?
ジェネリック医薬品の供給が不足していることによって、医療機関にはどのような影響があるのでしょうか。 ここからは、ジェネリック医薬品の供給不足による医療機関への影響をご紹介します。
必要な薬を即座に患者さんへ提供できない
ジェネリック医薬品の不足を受けて厚生労働省は各薬局や医療機関へ、「1カ月分程度の在庫量」又は「従来の購入量の 110%以内」を目安に発注をするようにと求めています。 こうすると、発注のタイミングを誤りジェネリック医薬品が品薄になるという事態が起こる可能性もあります。また、なかには、医薬品の供給不足を招かぬようにと必要量よりも多く購入する医療機関が出る可能性も懸念され、ますますジェネリック医薬品が不足する可能性も出てくるかもしれません。そのためジェネリック医薬品での治療を希望される患者さんに、ジェネリック医薬品を即座に提供できなくなる可能性があります。
医療用医薬品の供給不足に関する対応について|徳島県ホームページ
治療拒否の患者さんが出てくる可能性
ジェネリック医薬品は安価で購入できるということから経済的な負担に悩む患者さんであっても治療を継続できるものでした。 しかし、ジェネリック医薬品の供給が不足すれば先発医薬品での治療に切り替えなければならず、これが患者さんの経済的な負担になるかもしれません。 ジェネリック医薬品は先発医薬品と比べると数日単位でしたらあまり割安感を感じないかもしれません。しかし、長期服用すればするほどお得になるというのが特徴で、慢性疾患で長期的に薬を服用するとなった場合には年間で1万円以上の差が出てくると考えられています。そのため、経済的に先発医薬品での治療が負担になり治療を拒否するという患者さんが出てくるかもしれないのです。
まとめ
2020年から現在までも影響しているジェネリック医薬品の供給不足。社会情勢も相まって今後急激にジェネリック医薬品不足が解消されるのはまだまだ難しいかもしれません。 医療機関に対しても少なからず影響が出てくることが懸念されているため、今後のジェネリック医薬品の動向を静観しつつ、ジェネリック医薬品を使わないと治療が困難という患者さんに寄り添ったアプローチができるとよいでしょう。 ジェネリック医薬品の供給不足による患者さんへの影響を目の当たりにすることで働き方を考えてしまうこともあるかもしれません。 クラッチナースでは求職者の適性に合わせた求人をご紹介できます。まずはお気軽にご連絡ください。
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